別れ


え〜。うっそー。マジですか?
落ち着けよ、俺。
だが、ケツのポケットに入れてあったハズの財布がどんなに手を突っ込んでも無いのだ。
慌てて他のポケットもまさぐってみるが既に肌への感触で無いのは判りきっており、やっぱり無かった。
ゲッ
ひょっとして、俺、文無し?
故郷を遠く離れたこの姫路で?!(大袈裟)
いやその前にココの払いはどーすんだ?
・・・とにかく冷静になって考えてみよう。
落としたか?でも何処で?
ここで、姫路に着いて駐車場で車を降りて以来、私は何もモノを買っていないって事に思い当たった。
食べ物はこれからたらふく食うんだし、と思って買わなかったし姫路に来る道中さんざんジュースを飲んでたので喉も乾いていなかった。
おまけに姫路城には入ら(れ)なかったし、
基本的に私には“旅行に行ってお土産を買う”という習性は無い。
って俺まさか1円も持たずに姫路の町を数時間もうろついてたのか?!
いや、そんなわきゃないな。
って事はやっぱどっかで落としたー!?!?

カバンを隅々まで調べるがやっぱり無い。
救いは姫路に来る途中でガソリンを満タンにしてあった事だ。
下道を帰ればいちおー家には辿り着ける。
で、結局その場は、後で、っちゅー事で済ませてもらいました。まる。
皆さん優しい!

店の前でかなり恥ずかしい記念撮影を終え、ちょっぴりブルー入った状態で2次会突入。
俺も無一文でよくいくなー、と自分で思いつつも。
2次会の会場に向かう途中、MICKさんがどっか行ってしまったが、takeさんを筆頭に誰も待つ様子がなかったので私も気にせず皆に着いていった。
2次会はどーやらスナックみたいだ。

着いてスグ、カバンをソファーにひっくり返してじっくり中を見てみるが、やっぱり財布は無い。
ふー。
もーこーなったら“車に置き忘れた”って事に賭けて腹を据える。
カナスギさんから頂いた「絶対車にありますよっ」というコレ以上無いくらいの暖かい言葉あっての事だったが。

ここでは本当にいろんな事があった。
ライトアップされた姫路城 クソ寒い中ライトアップされた姫路城撮りに外へ行かされたり、
師匠は相変わらず常に“場”の中心にいておもろかったし、
カナスギさんが見る見る無口になっていってとうとうダウンしたり、
小寺さんはボソボソっと生で極寒の地を放ったり、
その際、小寺(こでら)さんを大声で「でらさんっ」と呼んでしまったり、
ノートパソコンからみんなでBBSに書きこんだり、
イギリス紳士さんは水割り飲みまくっててどこが酒弱いんジャイっと思わせたり、
なんでよりによってヒゲやねん!と某ガンダムについて話し合ったり、
MICKさんはやっぱりス○ベだったり、
takeさんがとても奥さんには言えないような意外な一面を見せたり、
えとっちさんの話しはすっごい美味しそうだったり、
一生のうちでそー何度も出来ないような貴重な経験をしたり・・・
それら全てに共通してるのは、それでも面白かったって事です。

途中、ダウン寸前だった師匠との別れ際、しっかりと握手した。
ありきたりな感想だけど、大きく暖かかった。
私はもうこの時にはすっかり気も変わっていた。
どんな事になってもアミーゴとして自分なりに頑張ろう、そう心に誓う。

そんなこんなで2次会も終わり、そろそろ日付も変わってきそうな時間だったが、勢いで3次会へ。
しかしココで記憶寸断。
疲れたって事はまったくなかったけど、寒い中歩いてきた後だったのでなんせ眠かった。
店のねーちゃんがやたらスレンダーだったのだけは憶えているけど写真も撮ってないほど。
でもメチャメチャ良い雰囲気の店でした。
野郎ばっかりでさえなければ・・・

ここで、残ったみんな(MICKさん・takeさん・小寺さん・えとっちさん)でイギリス紳士さんの泊まってるホテルまで行く事に。
ちょっとイギリス紳士さんとこの部屋よって休んでいったら?
MICKさんからそう提案があったので、特に断る理由も無いし、どんな部屋に泊まってるのかもいっぺん見てみたかったのでお言葉に甘える事にする。
ホテル前でMICKさんtakeさんとえとっちさんらとごく自然に別れ、いざフロントのにーちゃんは無視してイギリス紳士さんご宿泊の部屋へ。

途中、カナスギさんの部屋に寄ろうかという提案もなされたが
男が夜、ビジネスホテルで部屋に一人・・・
マズい場面に出くわしても何なんで控えておく事に決定。

部屋はホントーにごく普通のビジネスホテル風の部屋だった(アタリマエ)。
びっくりしたのは私が東京に出張に行った際に利用したビジネスホテルと間取りから家具から全部一緒だったって事くらいだ。
さて、休むって名目で来てみたものの・・・実は私は2次会以降、ほとんど酒は飲んでなかったし、後半に至ってはウーロン茶ばっか飲んでたので、この時ほぼフルパワー状態。
でもまあ部屋入ってスグ出て行くのも何だしなーと思って何気なくTVを見ていたら、部屋の空気がどーもおかしい事に段々気がついた。

な、なんか小寺さんがソワソワしてる・・・
まさか小寺さんってソッチ方面のヒトだったのか?
イギリス紳士さんはといえば着々と寝る準備に入っている。
ついにはパジャマ姿で登場し、ベッドに寝転がってTVを見はじめた。
そして時折、悩ましげにチラチラと小寺さんの方を見ている。
ま、まさか小寺さんを誘っているのか?
私は茶(ホテルに来る途中takeさんに買ってもらった)を飲んだりTVの話しを振ったりしていたが、小寺さんはソワソワしつつもまるで何かを待っているかのようにじーっと椅子に座っている
ハッ
俺か?
俺が出ていくのを待っているのか?!
邪魔者は去ろう・・・
いたたまれない雰囲気の中、ペットボトルに残っていた茶を勢い良く飲みきり、
「じゃ、私はそろそろコレで」
という良くわからない理由を述べて部屋を後にする。
その時、小寺さんが“ふ〜”っと胸を撫で下ろすようなシグサをしたのを私は見逃さなかった。
お幸せに・・・
小声でそう言って出ていったのを聞かれたかどうかは定かではないが、これから二人に待ちうけるであろう様々な試練を無事過ごせるよう祈らずにはいられなかった。

そうして最後に別れたお二人が熱い夜を過ごしているであろう時、
私は一人、夜の姫路を愛車の停めてある駐車場に向かって黙々と歩いていった・・・


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