姫路


繁華街から姫路駅を抜け、その南側にある駐車場へ向かって、テクテク歩いていく。
もう辺りに人影は無く、明かりすら乏しかった。
ドキドキドキドキドキドキ
酔いもすっかり抜け、オフ会の興奮からも醒めていた私に
 『財布無かったらどーしょー』
という不安が激しく襲ってきた。
途中、やたら警察が張り込んでたのにもビビリながら、人気のまったく無い駅前を通りすぎる。
そのまま、駐車場へは何事も無く着く事が出来た。

愛車の前に立ち止まり、深呼吸を試みる。
大丈夫だ・・・きっとある・・・
そう思っていても数分ほどドアを開けるのを躊躇してしまった。
窓から見る限りは何も無い
だが、躊躇していても寒いだけだ。
 『ええい、ままよっ』
意を決してドアに鍵を入れ、一気に開く。
するとそこに・・・あったーーー!!!
財布や財布や。My財布や〜
思わずガッツポーズまで決めてしまった。
あったのだ、助手席に。ちょこん、と。
やったぜぇ!
ん?・・・って待てよ・・・
つー事はあ、俺ってえ、
やっぱ1銭も持たずに姫路の街をウロウロしてあまつさえオフ会にまで参加したって事か?

些細な疑問はさておき、とりあえずこれからの予定だ。
身体のほうは特に疲れは無いとはいえ、心はフルマラソン完走後のよう。
いや、やった事ないけど。
多分このど真夜中に家に出発すれば途中眠ったままで別の地へ旅だってしまうだろう。
どーせ明日も休みだし。
何より姫路城にまだ入ってないし。
そんなわけで、姫路に一泊決定!
もちろん、このようなシチュエーションで泊まるところなど決まっている。
 ・車で来てる
 ・野郎一人だ
 ・どこでも寝れる
 ・いまさら金は使えん
以上の条件で安全に少なくとも駐禁を切られたり、店員に注意されたりする可能性が無い所へ私は車を向かわせた。

数百円を支払って入ったその場所で、私は静かにエンジンを切った。
寒い事は寒かったが、別に凍えそうなほどでもなかったからだ。
それにしても俺はこうやってココのお世話に一体何回なっただろう?
全国の主要都市には必ずあり、一泊くらい車を停めとく事などどうという事もなく、
しかも必ずトイレ付き。
やっぱ高速のサービスエリアって便利だなー。

眠気はほどなく訪れてきた。
まーあんだけ騒いで飲んで心労を重ねた後だったし。
そのせいだろうか、この時みた夢はマレに見るほど奇妙なものだった。

「真っ暗な闇の中、私は車でえんえんと走っている。
 両側に2車線ずつの何の変哲も無い高速道路だ。
 見渡す限り、ほかに走っている車は無く、私の車だけがこの孤独なロードを満喫していた。
 だが、しばらくすると平行して走る線路から電車が近づいてくるではないか。
 それは、滅多に使う事のない“様子が変”という言葉がぴったりきそうな風景だった。
 窓と言う窓から赤い謎の光が放たれ、そして屋根の上にはパトカーを彷彿とさせる赤いパトライトが幾つも並び、それらがまるで狂ったように点灯している。
 ふと道路に目をやると、いつのまにか道の端にもパトライトがずらっと並び、重なり合うかのように幾つも幾つもえんえんと続いて点灯していた。
 それはさながら天変地異の前触れかのようである。
 そのうち、いつの頃から走っていたのだろう、前を走る一台の車が、それらを見ていきなり道のど真ん中でスピンターンをキめ、急反転したのだ。
 そして高速で私の運転する車とすれ違うと、そのまま猛烈な勢いで走り去って行く。
 まるで前方から来るであろう何かとんでもないモノから必死で逃げ出そうとするかのように。
 な、何事?!
 それまで順調にドライブしていた私は、この生まれて初めて味わう状況に激しく動転した。
 そして数分後、意を決し、私も何かに憑かれたように必死に反転して、その場を離れようと車をすっ飛ばした。
 後ろからパトカーか何かに追いかけられながら、そのうち検問が見えてきた。
 近づくにつれ、イカしたバイクや地面スレスレの車が、ナンタラ警察24時って番組で見たように路肩で取り押さえられている。
 ぼ、族の取り締まりの真っ只中に入ってしまった?!
 そのうち道路には赤いコーンが並べられ、飲酒検問よろしく車線を1つにまとめられ、赤い棒で指示するポリに誘導させられるがまま、私の車も停車させられた。
 この車はちょっぴし改造してあるが、車検もとおるほんのささいなシロモンである。それに今んとこ法に触れるような事は何もしていない。
 それでも何故かドキドキしながら私の車は隅々までチェックされていった。
 そうすると、さっき捕まえられていた暴走少年がココに連れてこられたのである。
 はて?
 ヨボヨボのじいさんのごとくほとんど歯の無い健康と対極的な位置にいるその少年は、いきなりこの車を指して
 「ああ、この車っすよ」
 とおっしゃられやがった。
 何の事じゃー!
 そう心では声を大にして叫んでいたが、体の方は驚きと不信から微動だにできなかった。
 そして、ポリと思わしき集団がワラワラと集まり、私の車を更に丹念に調べ上げて行く。
 そうすると、トランクの奥からでっかいスパナが見つかった。
 不信感をアラワにするポリ軍団。
 得意げなじじい少年。
 頭の中は「へ?へ?」で一杯だ。
 そして・・・」目が覚めた。
(注:読まなくて良いです<笑)

・・・長いんじゃ!>!!
夢なんてメモっちゃ駄目だね

うーん。
で、そんな事ぁ全然まったく関係なく気持ちのいい朝だ。
どんなとこでも寝れる自分の体質が、こんなとき本当にありがたかった。

とりあえず今日の予定は、と。
昨日の飲み代を結局全部立て替えてもらったtakeさんに、財布存命の報告とお詫びと支払いしなきゃね。
でもマズは風呂だな。自分じゃ気付かないケド今どんなニオイを発してるのかちょっと不安だし。
それに私はこう旅に出て、その現地の銭湯を味わうのが結構好きなのだ。
姫路はどんな銭湯なんだろなー。

いったん車の外に出て、軽くノビを終えた後、車を発進させて高速を出る。
SAだけが目的だったので、結局1区間数百円分走っただけだ。
ちょいと寝苦しかったけどホテルに泊まるよりゃあ安いわな。
自分一人か野郎同志でないとできないワザだけど。

姫路の駅をちょっと過ぎた辺りのマクドで朝食を摂る。
朝のマクドはガキ多すぎ。
んな事ぁともかく、速攻で食い終えて店を出た私は、風呂屋の位置を調べるため、またもや最寄の公衆電話の備え付けの電話帳で『銭湯』を調べる。
ぬうぅ、無い
ほんのり趣旨の違う風呂屋なら何件か書いてあるのだが、まっとうな銭湯が姫路にはほとんど無いのだ。
とりあえずその数少ない中から、今いる場所の一番近くにある銭湯に目星をつけ、いざ出発。
で、その小1時間後、私は迷子になっていた・・・


<まだその7が続く>



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