新聞を読んでいると、まずコレに関する情報に目がいってしまう。
なんせオモロイのだ。
日進月歩という言葉ですらすまされない程のスピードで向上し、様々な技術が生まれてくるこのハードディスク(HDD)に関わる最新情報が。
と言ってもスポーツ欄も芸能欄もない、延々と工業や産業についてのみ載ってる“工業新聞”や“経済新聞”って新聞の話しですが。
普通の新聞は読まなくてもコレらはほぼ毎日のように読んで楽しませてもらってます。
会社では名前は知られてなくても、「いつも新聞読んでる人」と覚えてもらってるくらいに。
今現在(2000年4月)で、年度内にはなんと1平方インチあたり30ギガビット(8ビット=1バイト)のHDDが出てくるそうである。
これがどれくらいの情報量かと言うと、単純に現在最高容量のHDDをソレに置き換えたとすると、たった1器のHDDで約150ギガバイト(約150,000メガバイト)もの桁外れな容量が可能になるのだ。
ほんの3年くらい前までに、「2001年までに実現は夢ではない」と言われた“10ギガビット/1平方インチ”を遥かに超えている容量である。
CD−R(640メガバイト)に置き換えると200枚分を軽く超えるこの大容量、そんなにいっぱいあって何使うんだ?って気がしないでもない。
そしてそれが今この現時点でのごく普通の人の意見ではないだろうか?
だが、私も初めて会社に入った数年前、まだ年号が平成に変わってそんなに経っていない頃、同じような事を考えていた事があった。
当時100メガバイト〜200メガバイトが主流だった頃、出てき始めた1ギガバイト(約1000メガバイト)のHDDを、そんなにあって何に使うんだ?、とよく話していたのを覚えている。
まだ、フロッピーディスク(FD)が記録メディアとして現役バリバリだった頃である。
(ちなみに現在ではCD-Rの方がFDの流通量を上回っている)
だいたいのデータはFDに収まり、更にそのデータを圧縮すればFDの1.2メガバイトの容量でも十分余裕があったのだ。
この頃、私はなけなしの給料から8万円もの大金をはたき、200メガバイトのHDDを購入したのをよく覚えている。
今となっちゃー忘れようにも忘れられない思い出だ。
まーその他にもたった16メガバイトのメモリーを4万円以上も出して買ったとかいうリメンバーがあるけど・・・そこらへんはきっと上には上がいるでしょうからね。置いときます。(でも当時はそんなメモリー積んで何に使うねん、と言われたもんだ・・・)
それにしても当時と比べ物にならない量産効果もあるとはいえ、本当に安くなったもんである。
今じゃHDDじゃ10ギガバイトあたり高くて1万5千円、メモリーは128MBで1万円。
単純な計算だが、メモリーは32分の1、HDDにいたっては260分の1にまで値段が落ちている計算だ。しかも性能は向上していて。
だが現在では、それに相対するように、何につけても情報量は肥大している。
文書しかり画像しかり。
文書に関して言えば、たとえばたった1文字「あ」と2バイト分の情報を書いて保存しただけでも、Micr○soft社のW○rd97を使用すると、約19キロバイト(約19,000バイト)ものファイルが出来上がる。
そしてこれはバージョンが最新になればなるほど増えていくのだ。
画像に関してはデジタルカメラに代表される高精細化。それに伴う画像サイズの拡大。
よほど劇的な画像圧縮技術が確立されない限り、留まる事はないだろう。(コレに関してはまた別の機会に)
データに限らずアプリケーション自体の肥大化は、誰しも身をもって体験してると思うので省略するが、この他にも、まだまだHDDの容量拡大を促す要因はいくらでもある。
最たるモノが音楽データであり、動画のデータである。
動画に関して言えば、現在一番メジャーで圧縮率の高いMPEG-2という形式を採用していても、DVDでよく言われている4.7ギガバイトもの容量をもってしても、2時間ちょいしか記録できない。
そして、これだけ扱うデータの大きさが巨大化してくると、単にHDDの容量が大きくできるようになっただけでは済まなくなってくる。
データが大きくなったのに比例して、そのデータを扱う速度までも大きくなると、利便性に大きく欠ける事になるからだ。
いま、大きさが1メガバイトの収まるファイルが複数たくさんあったとして、それをアクセス速度の遅いFDでやりとりしようとする人はいるだろうか?
多分ちょっとでも、いやFDに比べればかなり速いMOやCD-Rを、一時記憶媒体として使用するでしょう。
私の場合、まだCD-ROMドライブすらあまり普及してなかった時代、LANに繋がっていないマシンにFD版のWindows95をインストールさせられた時ぁマジ「人生って何?」まで考えましたから。
この、HDDに対する容量UPと速度UP。
そしてそれによる問題を解消するための新技術。
それらを今、既に実現しているモノも含めて列挙してみたいと思う。
実際のデータは、HDDの中にあるディスクに、磁気を使って読み書きしてる訳だが、その磁気を実際に読み書きしてる装置が、ヘッドと呼ばれるアナログレコードでいうと針の役目をするモノである。
ディスク上のデータの高密度化が進むと、そこに書き込まれる磁気データ小さくなるという事であり、当然磁力も弱い。
それを読み取るために、ヘッドは高密度化に伴ってどんどん感度を高くする必要がある。
そのための技術がまた面白い。
一昔前のHDDに採用されていたMIG(Metal In Grap)ヘッドや薄膜ヘッドは、単純にコイルに電流を流して磁化する事によりデータを書き込み、ディスクに書き込まれた磁界の変化により発生する電流を検出する事によってデータの読み込みを行う。
これを発展させたものがMR(Magneto Resistive)ヘッドと呼ばれるヘッドである。
このMRヘッドには、磁気抵抗効果と呼ばれる磁界の変化で電気抵抗の変わる素子を利用し、これにより弱い磁界(小さい磁力)でも読み取る事が可能になった。
そして近年主流になりつつあるのが、MRヘッドより更に読み取り能力のあるGMR(Giant Magneto Resistive)ヘッドだ。
GMRというのは巨大磁気抵抗効果という意味で、そのまんま先のMRヘッドの効果倍増版である。
ここらへんの仕組みともなると、大学の物理学研究所等のウェブページなどを探した方が良いだろう。(私にゃーそこに書いてあった宇宙語がわからんかった・・・)
これらのMRと名前に付くヘッドには、その性能を示す値として抵抗変化率というモノがある。
初期のMRヘッドはこれが2〜3%程度で、
ただどちらのヘッドも読み込み専用のヘッドであり、書き込みには昔っからの薄膜ヘッドなどが複合されて使用されている。
そして一番興味深いのは、これらの技術が全て「理論で証明されたもの」ではないという点である。
なんせ現場で言われている言葉を引用させてもらうと、
「原理を検証している暇は無い。
役に立つ現象が見つかり次第すぐ使っていく。」
だそうで。
これでなければライバル企業にすぐ追い抜かれてしまうからだろう。
なんとも凄まじい!
データが実際に保存される場所であるディスクの材料にも、最近変化が起きている。
現在はアルミが主流であるが、これからはガラスを使ったディスクが増えてくるのは確実である。
その理由として、1のヘッドとディスクの距離だが、これが短くてすめば当然その分感度も上がる。
それを実現するためにはより表面の滑らかな材料の方が適しているからだ。
それにガラスはアルミに比べて硬度も高く、高速回転時の波打ちの低減や、ヘッドがディスクに衝突した際の変形もしにくく、加工もしやすい。
あとはコストと、アルミを材料にして使っていた細かい技術が使えない点の改善だけである。
それもIBMが既に製品化してる以上、過去の問題であり、これからどんどんガラスを使ったディスクが増えていくものと思われる。
数年前まではこれも「そうなるかもしれない」と言われていた技術である。
ディスクに書き込む方式にも改善の余地はある。
現在はディスクに対して水平方向に磁気を記録している。
だがその磁気と磁気の間隔が狭まりすぎて、それを判断(検出)できる限界に現在近づきつつある。
それらをなんとか克服するため、磁気をディスクに対して垂直方向に書き込む方法も模索されている。
これが実現すれば記録密度の更なる向上が可能だが、あまり噂を聞かないところをみると、まだまだこれは研究室レベル段階らしい。
それだけに今から気になるところではある。
これは最近大いに騒がれているので耳にしている方も多いんではないでしょうか。
最後に、現在激しい価格競争を繰り広げているパソコン用途への搭載用のHDDは、メーカー各社採算がかなり悪化しており、撤退や事業縮小が相次いでいる。
更には先に挙げたHDDの記録容量の高密度化による部品点数の削減や、大手メーカーで行われているコスト低減のための部品の内製化率の高まりにより、部品供給メーカーにもかなり厳しい状況だ。
そんな中、今もっとも将来を期待されていて、HDDメーカーが口を揃えて言っているのは、なんと家電(主に動画記録)用途向けである。
既にご存知の方も多いと思うが、例えばデジタル化が進む映画製作現場などでは、コンピューターグラフィックスの活用や編集作業が容易になるため、フィルムからデジタルデータへの移行が急速に進んでいる。
そして実現すれば膨大な需要の望まれる、家庭でのデジタル録画事業が開始された際に、少しでも優位に立とうと水面下で各社シノギを削っているのだ。
この家電への応用で必須になってくる、HDDの静音化・対衝撃性・省電力化・途切れなくデータを読み書きする為の技術、これらも 年々そのレベルが向上しており、次々と生まれてくる技術には目を見張るものがある。
逆に考えるとHDDが生まれて十数年、まだまだ改良の余地があるという事だろう。
もし数年後、これらの技術が確立されていれば、私はもう一度このページを見なおし、新たにその時点での最新情報を書き込むだろう。
そして、まだ騒がれていないその技術を確立したベンチャー企業の株を買いまくって一山当ててやるんだ!ってのは公然の秘密である。
全部外れてたらちょっと心が痛いけど(笑)
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